rakraから生まれた　KOGIN-STOOL～津軽～

青森県と宮城県の手仕事、岩手県のショップがコラボレーション

宮城県仙台市秋保を拠点にオーダー家具などを製作するSENDAI FORME（センダイフォルム）のスツールと、青森県指定無形文化財に指定される「こぎん刺し」を今に伝え自身でもこぎん作家として活躍している石田舞子氏によるコラボレーション。

制限があるから生まれた美しい形

国産の広葉樹は、強度が高く傷がつきにくいなど家具材向きなのだが、尺が短く幅が狭いことから使用が難しいとされてきた。SENDAI FORME（センダイフォルム）では、制限のある部材でも使える折り畳み・小型家具を開発してきた。

今回使用したのは、秋田県産のイタヤカエデを出来るだけ無駄を出さずに使おうと考えだされた形は、コンパクトで美しい。脚はねじ込み式で取り外しも可能だ。

　青森県の津軽地方に伝わる独特な刺し子の呼び名である「こぎん刺し」。古い書物では「小布」「小巾」と書かれ、麻布の短着を意味する。
江戸時代、綿花が育たず、倹約令により木綿の着物を着ることを制限されていた津軽地方の農民たちは、大麻や苧麻などを育て、その繊維で糸を作り麻布を仕立てた。また、防寒の為に別の麻糸で布目を塞ぐように刺し子を施した。やがてその刺してたちが、現在に残る美しい模様を生み出すようになったと考えられている。

よく使われる模様は、津軽弁で「元になるもの」を意味する「モドコ（基礎模様）」と呼ばれ、身近な自然を表すもののほか、家族の想いを魔除けや家内安全の意味を込めたのものがある。制限のなかから生まれた「美」という特徴はSENDAI FORMEと共通しているのだろう。

使用する素材にそれぞれの想いが宿る

こぎん刺しのための布「こぎんドゥエル」

KOGIN-STOOL～津軽～の座面に「こぎんドゥエル」という布を使用。青森県弘前市のこぎん刺し専門店「津軽工房社」のオリジナル商品。
「本来のこぎん刺しとおなじように刺せる布をつくりたい」という想いから、蚊帳生地を長く生産してきた奈良県の「三広織布」と共同で開発した。津軽工房社の代表・引間さんは「技法や模様だけではなく、こぎん刺しがどのような環境下で生まれ、どのようにして織りあげた布に、どのような想い刺されたものであったかも伝えていかなくてはならないと思っています」と話す。「宿る」という意味があるドゥエルの名がつく麻布には、引間さんや指し手の想いが宿されていく。

古来の製法が生み出す透明なブルー

座面に使用した生地（こぎんドゥエル）を古作こぎんと同様に、藍で染める。
今回協力頂いたのは、青森県弘前市の染織工房「Snow hand made」の代表佐々木亮輔さん。
木炭の灰汁とスクモのみで作った染液で染め上げる「地獄建て・正藍染」を行う染職人だ。
スクモは、弘前市で自ら育てるタデアイを乾燥させ、100日程度発行させたものを使用している。

座面の模様にイメージしたのは、津軽の春

今回、石田氏がこぎんを刺すにあたりイメージしたのは、「津軽の春」。
浅葱色の麻布に、北東北の人々が春を待ちわびる想いや、新年度にいいスタートを切れるよう願いを込め、「梅の花」と「猫の足」のモドコを刺した。
雪が残り、梅の花が咲く北東北の街で、春を待ちきれず外へ飛び出した猫の足跡が並ぶ情景をイメージしている。